
「自分たちの強みを商品にしたい。でも、何から決めればいいのか分からない」
「サービスの内容はそろっているのに、なかなか選ばれない」
そんなとき、僕は機能やメニューを増やす前に、立ち止まって考えてほしいと思っています。
誰に、どんな変化を届ける商品なのか。その変化を、お客様自身は本当に望んでいるのか。
商品設計は、売り手が提供したいものを並べる作業ではありません。お客様が望む状態に近づくための内容、価格、提供方法を具体化し、実際の反応を見ながら作り直す作業です。
この記事では、コンサルティングや研修、業務支援などのサービスを作りたい経営者・事業担当者に向けて、商品設計のやり方を7つのステップで説明します。既存商品の見直しにも使える考え方です。
商品設計とは?「誰に何を届け、どう提供するか」を決めること
この記事では、商品設計を次の項目をつなげる作業として扱います。
- 対象顧客: 誰の、どんな場面で役に立つのか
- 提供価値: 利用することで、何がどう変わるのか
- 商品内容: その変化のために、何を提供するのか
- 提供条件: 価格、期間、回数、対応範囲をどうするのか
- 販売・検証方法: どう届け、何を見て改善するのか
物販では、仕様に加えて品質や製造条件も欠かせません。一方、サービスでは「どこまで支援するのか」「誰が担当するのか」「お客様には何をしてもらうのか」が重要になります。
僕が大切にしたいのは、商品内容を売り手の都合だけで決めないことです。
土台にあるのは「共感・インサイト・価値の具体化」
僕たちENERGIZEが提供する「DIVE」について、石井裕大さんは動画で、次の3つのサイクルを説明しています。
- 共感: お客様に話を聞き、観察し、可能なら同じ体験をしてみる
- インサイト: 発言や行動の背景にある価値観、困りごとを考える
- アイディエーション: 価値を試作品などの形にして、反応をもらう
DIVEは、デザインシンキングを参考に、共同代表の生島を中心に作った独自のプログラムです。僕自身がファシリテーションを担当しているわけではありません。
ここからは、この顧客理解の考え方に価格や提供条件の確認を組み合わせて、商品設計を進めるための7ステップに整理します。
出典:既存事業を超えるような新規事業を生み出すには? "計画的に" 新規事業を生み出す「3つのステップ」
商品設計のやり方① 課題と「喜んでほしい顧客」を絞る
最初に決めたいのは、商品名でも価格でもありません。
どんな課題を解決したいのか。その課題を持つ人は誰なのか。
例えば「中小企業向けの研修」だけでは、必要な内容を決めきれません。同じ中小企業でも、新人の育成に困っている会社と、管理職に仕事を任せられない会社では、望む支援が違うからです。
まず、次の4点を書き出してみてください。
- 誰が困っているのか
- どんな場面で困るのか
- 今はどう対処しているのか
- どうなれば、その人にとって成功なのか
法人向けなら、実際に使う人と、購入を決める人も分けて考えます。現場には便利でも、決裁者が導入する理由を説明できなければ、購入には進みません。
社長の賛成を、顧客の反応に置き換えない
僕たちが開催した事業開発キャンプで、メンバーが僕に新規事業の方向性を確認しに来たことがありました。そのとき僕は「僕に確認しないで」「ペルソナに聞いて」と伝えています。
僕が、その商品の対象顧客ではなかったからです。
社内では、トップに聞くと正解らしい答えが返ってくるかもしれません。でも、社長が気に入ることと、お客様が買うことは別です。
経営者が投資を判断する責任と、顧客に価値を確かめる作業は、分けておきましょう。
出典:ENERGIZE主宰の「事業開発キャンプ」を2日間 完全密着。経営幹部100名が集まって真剣に新規事業について議論しました。
商品設計のやり方② インタビューで「実際の出来事」と「理想」を聞く
顧客像を決めたら、想像だけで商品を作らず、その人に話を聞きます。
「こんな商品があったら欲しいですか?」だけでは、どんな場面で必要なのかが分かりません。まず聞きたいのは、実際に起きた出来事です。
質問は、例えば次のように用意できます。
- 最近、そのことで困ったのはいつですか?
- そのとき、どんな対応をしましたか?
- 今使っている商品や方法で、足りないことはありますか?
- 改善のために、どのくらい時間や費用を使っていますか?
- 何ができるようになったら、成功したと言えますか?
最後の質問は、僕が営業でも大切にしているものです。
「課題は何ですか?」と聞くだけでなく「理想を聞かせてください」「何が起きたら成功ですか?」と聞く。相手が実現したいことを知ると、こちらが提供すべき支援も考えやすくなります。
ただし、理想だけで商品内容を決めるわけではありません。理想と、今の行動や制約をセットで聞くことが大切です。
また、DIVEで石井さんが説明しているように、観察や体験も顧客理解の方法です。説明を聞くだけでは見えなかった手間が、実際に同じ作業をしてみることで分かる場合もあります。
商品設計のやり方③ 顧客の言葉を、提供する価値にまとめる
インタビューの後は、要望をすべて機能に変えるのではなく、その背景を考えます。
例えば、ある会社から「研修の回数を増やしたい」と言われたとします。
本当に必要なのは研修の回数でしょうか。それとも、学んだことが現場で実践される仕組みでしょうか。
これは説明のための仮例ですが、同じ要望でも、背景によって商品は変わります。
| 顧客の発言 | 背景についての仮説 | 次に確かめたいこと |
|---|---|---|
| 研修の回数を増やしたい | 学んだことを実践できていないのではないか | 研修後、どの行動で止まっているか |
| 資料をもっと充実させたい | 現場で判断するときに迷うのではないか | どの場面で、どんな情報が必要か |
ここで注意したいのは、インサイトは「相手の本音を見抜いた」という断定ではないことです。
発言や観察した事実と、こちらの解釈を分けて記録し「こう理解したのですが、合っていますか?」と確かめます。
そのうえで、商品コンセプトを一文にします。
[具体的な顧客]が[困っている場面]で[望ましい状態]に近づけるよう[提供方法]で支援する。
この一文を見て、誰の何を変える商品か分からないなら、提供内容を増やす前に顧客理解へ戻りましょう。
商品設計のやり方④ 完成品の前に、価値が伝わる試作品を作る
コンセプトができたら、早い段階で形にします。完成品をすべて作る前に、顧客が価値を感じるかを小さく確かめましょう。
簡単な試作品で、知りたいことを一つ試す
DIVEの解説で石井さんが強調していたのは、完成品ではなく簡単な試作品を作り、顧客からフィードバックをもらうことです。完成後に「求められていなかった」と分かるより、早く修正できるようにするためです。
サービスなら、最初から教材やシステムをすべて作る必要はありません。
- 支援の流れをまとめた提案書
- 初回セッションの進行案
- 実際に使うワークシート
- 利用場面が分かる画面見本
- 範囲を限定した試験提供
何を作るかは、何を確かめたいかで決めます。
提案書なら「価値が伝わるか」を確かめられますが「実際に成果につながるか」までは分かりません。後者を確かめるには、試験提供や利用後の観察が必要です。
試作品は、粗くてよい部分と、省いてはいけない部分を分けましょう。必要な安全性、品質、個人情報の管理まで簡略化してよい、という意味ではありません。
商品設計のやり方⑤ 提供範囲・価格・届け方をセットで決める
顧客の反応を得たら、提供条件を具体化します。内容だけでなく、誰が何を担当し、どこまで対応するかも決めておきましょう。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 提供内容 | 何を行い、何を納品するか |
| 対応範囲 | 含むこと、含まないこと、追加料金になること |
| 期間・回数 | いつからいつまで、何回提供するか |
| 役割分担 | 提供者と顧客が、それぞれ何をするか |
| 価格 | 支払額、支払時期、変更・解約条件 |
| 提供体制 | 担当者、必要な時間、対応可能な顧客数 |
| 販売方法 | 誰とどこで接点を持ち、どう購入につなげるか |
価格は「誰にとって、どんな価値か」から考える
僕は客単価について話した動画で、誰もが納得する価格を基準にするのではなく、対象顧客と、その人が望むインパクトを明確にすることを伝えています。
そこで大切なのは、単にお金を持っている人を探すことではありません。
その人がどんなゴールを目指していて、自分たちの支援にどんな価値を感じるのかを考えることです。
ただし、価値を説明できることと、その価格で購入されることは同じではありません。また、高く売れても、提供に時間がかかりすぎれば継続できません。
価格は、次の3つを照らし合わせて仮決めします。
- 顧客が望む変化と、その重要性
- 競合や代替手段の価格、顧客の予算
- 人件費・集客費・サポート費などを含む採算
原価から必要な利益を考える作業と、顧客がその価格を受け入れるかを確かめる作業は、分ける必要があります。
高単価にすること自体をゴールにせず、価値、提供条件、価格がつながる商品にしましょう。
商品設計のやり方⑥ 対象顧客に提案し「好評」と「購入」を分けて見る
内容と価格が決まったら、対象顧客に提案します。「いいですね」と言ってもらえるかだけでなく、実際に検討や購入につながるかを見ます。
- 自分の問題を解決する商品だと理解してもらえたか
- 価格や提供条件について、具体的な検討が進んだか
- 購入、試験導入などの行動につながったか
- 見送られた場合、何が条件に合わなかったか
無料での好評価は、使い勝手や内容を改善する材料になります。ただ、それだけで有料販売の需要が確かめられたとは言えません。
売れないときは、商品だけでなく「伝わり方」も点検する
僕の動画に出演した三原尚美さんは、それまで自分のできることを提案していたところから、経営者の理想を聞き、その実現にどう役立つかを考えて提案するようになった、と話しています。
会社紹介資料の添削を担当したのは長井祐介さんで、三原さん自身が資料を作り直しました。動画では、資料改善後に4件提案して4件成約したと報告されています。
これは三原さんの経験であって、僕自身の営業実績ではありません。また、資料だけでなく、目標設定、学習、インタビューや提案の姿勢も変わっています。資料を変えれば誰でも同じ結果になる、という話ではないのです。
僕がこの事例から伝えたいのは、提供者ができることと、顧客が欲しい変化を、提案の中でつなぐ必要があるということです。
反応が悪いからといって、すぐに値下げや機能追加をするのではなく、対象顧客、価値の伝え方、価格、提供条件を分けて見直しましょう。
出典:売れる営業資料の作り方|AI資料と手作りで“成約率がここまで変わる”
商品設計のやり方⑦ 提供後の結果を見て、作り直す
商品設計は、販売開始で終わりではありません。顧客に提供した後の結果を見て、続けるところと変えるところを判断します。
事業開発キャンプの終了後、僕は、そこで生まれた案がそのまま進むとは限らず、これから形を変えていくという話をしました。
アイデアが生まれたことと、顧客に選ばれ、提供を続けられる事業になったことは別です。
提供後は、次の項目を振り返ります。
- 顧客が望んでいた変化に近づいたか
- 使われなかった内容や、足りなかった支援は何か
- 提供時間や費用が想定を超えていないか
- 顧客が評価した点と、購入時に期待していた点は一致しているか
- 次は何を変え、何を確かめるか
継続購入が前提の商品なら、その理由や利用状況も確認します。一方、単発で目的を達成する商品に、再購入率だけを求める必要はありません。
見直す日と、次の検証に使える時間・費用を決めておくと、改善を続けるのか、設計を変えるのか、いったん止めるのかを判断しやすくなります。
商品設計を始めるための1枚シート
ここまでの内容を、まずは1枚にまとめてみましょう。空欄は、これから顧客に確かめる項目です。
| 項目 | 記入する内容 |
|---|---|
| 対象顧客 | 誰が使い、誰が購入を決めるのか |
| 困っている場面 | 実際に聞いた出来事、観察した行動 |
| 望む変化 | 何が起きたら顧客にとって成功か |
| 未確認の仮説 | こちらの推測で、まだ確かめていないこと |
| 商品コンセプト | 誰に、どんな価値を、どう届けるか |
| 最初の試作品 | 何を作り、何を確かめるか |
| 提供条件 | 内容、範囲、期間、価格、役割分担 |
| 提案・販売方法 | どこで対象顧客と接点を持つか |
| 検証結果 | 発言、購入行動、利用後の変化、費用 |
| 次の判断 | 継続・修正・停止と、その理由、判断日 |
大切なのは、分からないことを想像で埋めるのではなく、次に誰に何を聞くかを決めることです。
まとめ|商品設計の答えを、社内だけで決めない
商品設計のやり方をまとめると、次の流れになります。
- 課題と対象顧客を絞る
- 実際の出来事と理想を聞く
- 提供する価値を言葉にする
- 試作品で反応をもらう
- 提供範囲・価格・届け方を決める
- 提案し、購入につながる条件を確かめる
- 提供後の結果から作り直す
僕が特に伝えたいのは、社長の頭の中だけで正解を作らないことです。
「僕たちはこれができます」から一歩進んで「お客様は何を実現したいのか。そのために何を届けるのか」を考える。
まずは、喜んでほしいお客様を一人思い浮かべてください。そして、その人の実際の経験と、望んでいる変化を聞くところから始めてみましょう。


